過剰に「お伺いを立てる」社会

みなさん、お元気ですか? 前回の更新から、なんと、ほぼ1年が経ってしまいました。

いつ更新されるのかと首を長くして待ってくれていた人は皆無だと思いますが(笑)、ひとまず、この長い長い空白期間に終止符を打ちたいと思います。

今回はタイトルどおり「過剰に『お伺いを立てる』社会」について書きます。

早速、実例を挙げてみましょう。

最近、仕事であれプライベートであれ、誰かから電話を受けたとき、初めにこう聞かれることが多いと思います。

「今、お時間よろしいですか?」

しかし、この質問には、本当に意味があるのでしょうか。

私のようなへそ曲がりは、この前置きを聞くと、こう返したくなります。

「あなたのおっしゃる『お時間』というのは、1分ですか? それとも10分ですか?」と。

現代人は何かと忙しいですから、電話をかけた相手に、対応する時間があるのか確認してあげるのは、もちろん親切と言えば親切です。

でも私は誰かに電話をかけるとき、こんなふうに尋ねるよう心がけています。

「3分ほど、お時間いただいてもよろしいですか?」あるいは「2点お尋ねしたいことがあるのですが、よろしいですか?」といったようにです。

この聞き方なら、電話の向こうにいる相手は「ああ、それくらいの時間ならいいですよ」、または「(2点の質問に答えていると時間が長くなりそうだから)また後にしてください」などと答えることができます。

私に言わせれば、「今、お時間よろしいですか」という質問は、本当に相手のことを気遣っているというより、「きちんと相手にお伺いを立てたのだ」という、自分のためのアリバイづくりにしかなっていません。

電話を受けた相手が、たまたま電車に乗っていた、車を運転していた、あるいは会議の直前であったという場合などを除いたら「大丈夫です」としか答えようがありません。

電話の相手が本当に知りたいのは、「この電話は簡潔な連絡事項の類であり数分で終わるのか、それとも、ある種の相談事であり長くなりそうなのか」、そのことです。

このように、相手に「お伺いを立てる」ことを重視する傾向は、もう10年以上前から始まっていたように感じます。

例えば美容院に行ったときも、こんな感じです。

・椅子に座った私の体にカバーを掛けるとき

美容師さん「(腕を通す穴に)お腕を通してください」

私「はい。(ド近眼でメガネを外すと何も見えないので、雑誌も読めません。だから腕を通す必要はありません)

・カバーの首の部分を結んだ後

美容師さん「お首は苦しくないですか?」

私「大丈夫です。(苦しくないように適度な強さでセットしてください)」

・シャンプーをしながら

美容師さん「お痒いところはございませんか?」

私「大丈夫です。(そうならないよう、しっかり洗ってください)」

・シャンプーのすすぎを終えた後

美容師さん「すすぎ足りないところはございませんか?」

私「大丈夫です。(そうならないよう、しっかりすすいでください)」

・シャンプー後に顔を拭く蒸しタオルを渡すとき

美容師さん「熱いのでお気をつけください」

私「はい。(タオルが熱過ぎないことを確認してから客に渡してください)」

もうなんというか、こうやって客に「お伺いを立てる」ことのオンパレードです。ほぼすべての質問が「大丈夫です」または「はい」と答えることが既定路線になっており、いちいち答えさせられる客は疲れてしまいます。

ただし、本当に時々ですが、こうした過剰とも言える質問をせず、淡々と自分の仕事をしてくれる美容師さんがいます。そういうとき、私は実に清々しい気分になります。

真のプロフェッショナルとは、客が満足できるものを、自信を持って提供する人だと思います。客の機嫌を損ねるのを恐れるあまり、形式的な質問を連発する人ではありません。

もちろん、無用なクレームを受けないよう予防線を張ることは、サービスや物を提供する側として、ある程度までは必要なことでしょう。

しかし、現代の日本社会において、それは明らかに度を越していると私は感じます。

話の途中から、職業人としての態度に重点が移ってしまいましたが、これは仕事に限らず、プライベートにおいても同じことが言えます。

まあ、かく言う私も、そんなに立派な人間ではありません。でも日頃から心がけているのは、このことです。

自己満足でしかない表面的な丁寧さではなく、相手が心からありがたいと思えるような、本当の気遣いをしたい

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中