子の看護休暇について考える

春めいた暖かい陽気の日も増えつつありますね。来月半ばからは、遂にマスク着用が個人の判断に任されるようになります。マスクを外して開放的な気分で過ごせる時間も、徐々に増えるはず。どこに出かけようかとワクワクしている人も多いでしょう。

ただしスギ花粉が大量に飛んでるみたいなので、しばらくはマスクで防御したほうが良さげですが…

さて、今回の記事は、子どもに関する休暇の話です。

みなさんの勤め先には、自分の子が病気になったりやケガをしたときなど、年次有給休暇とは別に、仕事を休める制度があるでしょうか。

正式名称は「子の看護休暇」といいます。育児・介護休業法で定められた労働者の権利です。

1 制度の概要

子の看護休暇の内容を、ものすごくザックリ説明すると次のとおり。

(1)対象となる子

小学校就学前の子

(2)休暇を取得できる人

日々雇用される者を除くすべての従業員

(3)取得できる日数

子どもが1人・・・1年度に5日まで

子どもが2人以上・・・1年度に10日まで

もっと詳しいことは、ネットにも多くの情報があるので、そちらを参照してください。

それと上に書いたのは法が定めた最低ライン。労働者にとって、さらに良い条件を各事業者が独自に定めるのは、もちろん問題ありません。

さらに2021年1月の法改正により、子の看護休暇は1時間単位で取得できるようになりました。改正前は半日単位でしか取れなかったんです。細かい単位で取得できたほうが嬉しいですから、これは明らかに進化ですね。

2 役所の現状

ところで私の勤務している役所では、子の看護休暇は「小学3年生が終わるまで」取得できるという制度になっています。

「1」に書いたとおり、法律が定めた取得対象となる子の年齢は「小学校就学前」です。言い換えると、小学校入学後の子については、従業員が看護休暇を取得できる制度を整えていなくても、法的には問題ないことになります。

そうやって考えれば、小学3年生まで取得できるというのは恵まれているのかもしれません。

ただし、実際問題、小学4年生になった途端に子の看護休暇を取りあげられると、年休(有給休暇)のやりくりで結構苦心するのが実態です。

特にひとり親だったり、いわゆるワンオペ育児になっている人は、さまざまな家庭の用事をこなすために年休を使うので、思いのほか早いペースで年休が減っていきます。

世の中には、平日の昼間しか窓口が開いていない、あるいは電話で問合わせをすることの難しい組織が多くあります。

よくある例を挙げると、病院、学校、役所、銀行などですね。(役所については当事者なので、申し訳ありませんと言うほかありません…)

そして、こうした所へ出かけたり電話で相談したりする任務のほとんどを、その家庭内で家事育児を主に担当している人間が担っているのです。

電話の問い合わせや相談も、ちょっと込み入った話だと、昼休みにその辺で突っ立って話すわけにもいかないので、結局は早帰りして家から電話なんてこともあります。

で、私も例外ではなく、年の終わりも近づいてくるとカレンダーとにらめっこが始まります。平日に年休を取って対応せざるをえない用事がどれくらい残っているかと、年休の残り日数を計算するのです。

しかし私が思うに、役所というのは国の省庁・地方自治体を問わず、自ら率先して働きやすい職場を実現するよう努力するべきですよね。民間の手本になるくらいでいい。

働きながら子育てしやすい環境をつくっていくのは、役所の仕事の中でも最重要課題のひとつです。その役所で働いている当の職員たちが、自分の職場は子育てしやすいと思えないとしたら…。それはおかしな話ですよね。

3 現在の基準の根拠とは

私が不思議でならないのは、「小学3年生まで」という線引きって、どんな根拠に基づいているのかということ(上に書いたとおり、法律では小学校入学で線引き)。

子育て経験のある人は実感として抱いているはずですが、子どもというのは小学校に上がった瞬間、突然丈夫になるわけではありません。

まあ乳幼児の頃よりも発熱しににくなったりというのは一般的にあることなのでしょうが、そんなに単純な話ではない。

そして何よりも、ひとりで病院に行くというのは、実にいろいろなことを自力で全部やるってことなんです。ちょっと書いてみますね。

《病院編》

・病気になったりケガをした時、ひとりで病院に行って、受付職員に症状を伝える。

・具合が悪い中じっと待つ。場合によって待ち時間は30分以上になる。

・問診票に記入する。過去の病歴や手術歴、食品・薬剤等のアレルギーの有無と内容、ワクチンの接種歴などを記入する。

・症状を医師や看護師に明確に伝える。医師からの質問にも的確に答える。

・医師の診断・所見、さらに検査をした場合は検査結果を理解する。

・薬剤等を処方された場合、薬剤等の効能や服用方法等を理解する。処方が不要という判断がされた場合、なぜ処方されなかったかを理解する。

・あとで保護者に伝えることができるよう、医師の診断・所見等を正確に記憶する。

《薬局編》

・窓口で処方箋、お薬手帳を提出する。

・病院の診察を終えた後なので疲れているが、ここでもじっと待つ。

・今回の症状や医師の診断結果および過去の服薬歴等に関する薬剤師からの質問に答える。

・処方された薬剤等に関する薬剤師の説明を理解する。

・服用方法等について疑問があれば質問し、それに対する回答を理解する。

・あとで保護者に伝えることができるよう、薬剤師との会話を正確に記憶する。

《家庭編》

・帰宅後は保護者が仕事から戻るまでの間、ひとりで静養する。

・必要に応じて、処方された薬剤等を指示にしたがって服用・使用する。

みなさん、どうですか。これって、小学4年生が全部しっかりできると思いますか?

でも、4年生になったら子の看護休暇は不要だといって、従業員から休暇を取り上げる根拠って「4年生になったら、これくらいできるでしょ」ということなんでしょうね。

しかし、どう考えても、上に書いたことを小学4年生がビシッとやるのは、よほどしっかりした子でも無理です。これは誰もが賛成してくれるでしょう。

4 適正な対象年齢

では本当に適正な対象年齢とは何歳なのか。それは法が定めた「小学校就学前」でもなく、うちの役所の「小学3年生まで」でもない。

適正なのは少なくとも「中学校卒業まで」、理想的には「18歳に達する日まで」、すなわち成人するまで、と考えます。

その根拠は以下のとおりです。

(1)医療機関による要請

医療機関のホームページなどを見てもわかるように、相当数の医療機関が「中学生以下の子どもが受診する際は、原則として保護者同伴で来院するように」という内容のことを書いている。医療機関も、中学生以下の子どもには大人が付き添う必要性が高いことを認めている。

(2)他の子育て支援策との整合性

18歳という年齢は、従前から他の様々な子育て支援においても、対象となる子または算定根拠となる子の年齢上限とされることが多い。東京都も、医療費助成の対象年齢を現在の15歳から18歳までに拡大する方針を打ち出している。

また、既に法律上の成人年齢が18歳とされたことからも、18歳までが子どもであるという認識が広く社会に定着しつつある。

子の看護休暇が「子育て支援」の一環であることは疑いようがないから、子どもが成人に達する18歳までは、保護者が子の健康管理をするための看護休暇拡充が重要である。

(3)子育てと仕事を両立しやすい職場の実現

長期的な視野に立った子育て支援で特に重要なのは、育児と仕事を両立しやすい環境を整えることである。

子を看護するために、従業員(職員)が常に年休を削って対応することを強いる現状は、子育てしやすい職場であるとは言いがたい。

より働きやすい職場をつくるためには、子の看護休暇の対象年齢を、最低でも15歳に達する年度にまで引き上げるのが必須である。

5 おわりに

それにしても、ひとりで病院にかかるって、これだけ多くの事柄をこなしてたんですね。大人になると当たり前のようにやってますが、あらためて考えると結構大変な作業。

だからこそ、子の看護休暇の対象年齢は、少なくとも15歳、できれば18歳にまで引き上げるのが正しい。そう私は考えるのです。医師だって保護者同伴で来なさい、と言ってるわけですから。

それと子の親(保護者)が二人揃っているのか、ひとり親なのか、そこを考慮して日数が調整されると、なおのこと良いと思います。これも結構大きな差なので。

児童手当などの経済的な支援は、もちろん本当にありがたいことです。しかし時間だって同じくらい大切。子育てとは、一日24時間という決まった時間を、仕事や家事、臨時の用事その他アレコレに対して、いかにうまく分配するか、その果てしない試行錯誤とも言えるのです。

以上、『子の看護休暇について考える』でした。いつも長文にお付き合いいただき、ありがとうございます!